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だってなに?
おぞましいから?
気持ち悪いから?
それとも同性だから?
違う、ただ逃げていただけだ。
「だって?」
そう言うと和奈は困惑した表情を浮かべ、顔を覗き込んで来た。
未来なんて知らないし、夢の叶え方だってわからない。そんなもの誰も教えてくれたことないから。でも不確かな未来を怖がって何もしないよりも、今できることを精一杯やりたい。それがどんなに絶望的な未来でもいい。
私は、それでも私は・・・。
「あなたのことを・・・和奈のことを・・・愛しているから。」
好きなんて言葉じゃ言い表せない。友達同士で大好きなんて言葉を使ったところで返って来る返事は「私もだよ」とか「ありがと」とかって言う軽いものである。
だったら使う言葉は、重くてもちゃんと気持ちの伝わるものを使いたい。
ちっぽけな脳みそで考え出した、最良の策。
あとはこの世界とおさらばするだけ。
私の突拍子もない告白を受けて、どんな表情をしてるかな?
困ってるかな?それとも冗談だと思ってるかな?
冗談だと思ってくれたら思ってくれたでいいや。そしたら全部なかったことにできる。
でも私の思いとは裏腹に、目の前に立っていた少女の目から、涙がポロポロと溢れていた。
「・・・和奈?」
思わず声をかけてしまう。
なんで泣くの?そんなに嫌だったのかな?
それとも親友だと思ってたやつにそんな風に思われててショックだったのかな?
「・・・じゃない」
「え?」
何を言っているのかよく聞こえない。聞き取るために顔を近づける。
「叶わない・・・夢なんかじゃない!!」
そういうと和奈は勢いよく体育倉庫の扉をあけ、飛び出して行った。
その背中を私は、ただ呆然と見守ることしかできなかった。
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