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眼鏡を曇らせた美穂はなんだか滑稽に見える。
曇っていてもちゃんと見えているらしい。
「今日は女体が少ないですね」
湯を肩にかける艶かしい仕草と曇った眼鏡が不釣り合いだ。
「ちょっと美穂さん変な言い方しないでくださいよぉ」
ね、陽子さん、とピンクのタオルで頭を包んだ芽以が陽子に同意を求める。
わずかにはみ出た髪が湯に浸っている。
梅雨入りが宣言されたのは二日前の木曜日。
花香る春の軽さに浮かれた後の重く暗い湿度は人の気持ちを家に閉じ込めてしまうのか、スポーツクラブの風呂場に人はまばらだった。
「今日はヨガのクラスも少なかったしねぇ」
腰まで湯に浸かった陽子は銀色の美顔ローラーで顔をしごく。
美穂は眼鏡を外し、ぼちゃんと湯につけた。
「あら美穂ちゃんそんな赤い目をしてどうしたの?」
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