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「会社にはバイトの件内緒にしておいて下さい」
この近所に住むという片桐賢一は美穂を拝むように背を丸め両手を合わせる。
その肩を陽子は叩き尋ねる。
「ねえ、ケンちゃんって童貞なの?」
「は?」
片桐賢一は怪訝そうに顔をあげた。
「あ、待って待って」美穂が慌てて陽子を遮る。
「それより片桐くんってBarに来る女食いまくってるたらしだってホント?」
その横で芽以がぼそり。
「ホモじゃないんだ」
片桐賢一の顔が歪む。
「一体なんのことですか?」
寝癖のついた頭で片桐賢一は背筋をピンと伸ばす。
よく見るとグレーのスウェットの胸元に食べこぼしのような染みがついている。
「なんだかよく分かりませんが、ぼくは童貞でも女たらしでもホモでもありませんから」
手に持ったビールをぐびりと飲む。
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