女その三人とその男

10/11
32人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
 コンビニで買って来たビールを一本新しく開け、残りを冷蔵庫にしまうと部屋の窓を開ける。 「今日は天気がいいけん甲羅干し日よりやね、ミドリ」  片桐賢一は水槽を窓際に寄せた。 「にしてもさっきはひどい言われようやったよ」  ビールを一口飲み、スルメを口に加える。  ギョロリとミドリの目がスルメを追う。 「童貞とかホモとか訳分からんわ」  確かにBarではちゃらい男を演じたところはあるかも知れないが、バーテンダーってそんなもんじゃないだろうか?  普段からあまり自分を出す方ではないが、まさかここまで誤解されているとは思わなかった。  ふと不安になる。  今こうしている自分は本当の自分だろうか? 「いや、いや、いや、いや」   首を激しく横に振る。  童貞でもホモでも女たらしでもない自分は本当の自分だ。  それだけははっきりしている。  だが....。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!