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灰
目がさめると僕は〈無〉の中にいた。
黒でもない、白でもない、何物でもないその場所に。
ああ、もしかしたら何者でも無いのは僕の方なのかもしれない。
時間の流れさえも此処には存在しないようだ。
僕の実体もどうやら存在していないらしい。
存在するのはただ僕の思考のみ。
〈僕〉は何処から来てそして何処へ行くのだろう。
そもそも『僕』とは何なのだろうか。
“〈僕〉は君で〈君〉は僕だ_”
僕は僕であり、君?
そう思った瞬間僕であるはずの空間と無であるはずの空間の境目が揺れた気がした。
僕には実体がある?
“そうだ、僕は〈ヒト〉だ_”
瞬間〈僕〉と〈無〉の境目が歪み捻れて〈僕〉が現れる。
ああ、なるほどね。
僕は1人笑みを浮かべる。
僕がこの世界を創るのか。
自分の〈掌〉を見つめる。
どうやら自分の体は思い通りに動くらしい。
さあ、手始めにこの訳の分からない世界に名前をつけようか。
此処は、
__〈灰〉
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