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第三章 ― 迷い道 ―
Ber― ORION ―
賑やかなクラブミュージックが響く中、三人の男女がカウンターに腰掛けカクテルを口にする。
「俺さぁ、そろそろかなって」
剛は、正輝と麻耶に語り始めた。
「いつまでも、健さんに世話になってばかりも悪いから、実は、今夜さぁ、仕事口紹介してもらうんだ」
剛はろくに働くことはせず、たまに寺の手伝いや葬儀屋の手伝いをする程度だった。
「岩ちゃん、偉いよっ。私もこのままでいいのかな」
一日6時間ほどのコンビニのアルバイトをしていた麻耶も悩んでいた。
「俺なんか、何もしてない一番の馬鹿だよ」
正輝は植物の研究に夢中になり、図書館と寺の敷地の一部で小さな実験を繰り返す日々。
「正輝は、俺達の希望だよ。諦めちゃいけないよ」
約束の時間から30分程遅れた頃、Berの雇われ店長、堂島が剛に声をかけた。
「岩ちゃん、武田さんが来られたよ」
「すみません。遅くなってしまって」
小太りで少し髪の毛が薄い、Berでは一際浮く存在の中年の男性が声をかけてきた。
場違いな事に本人が一番気づいていたのか、手にしたハンカチで何度も額の汗を拭き取っていた。
「あっ、武田優也と申します」
男は名刺を差し出すと剛に深く頭を下げていた。
「岩本剛です。宜しくお願いいたします」
名刺には、NPO法人 挑戦 と書かれている。
「挑戦?」
「えぇ、今の世の中は社会的弱者の自殺者が
年間2万人を超えているんですよ。
自ら命を絶つことを考えず夢に向かい新たな人生に挑戦させる。
我々は、一つでも多くの命を救うために挑戦する。その強い意志をチャレンジ、挑戦の名に込めた法人なんです」
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