捜査一課 一之瀬 奏

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工『あんた刑事か?』 犯人は尋ねた。 一「ええ、捜査一課の一之瀬と言います」 一之瀬は落ち着いた声で質問に答えた。 一「貴方の要求はなんですか?」 今度は一之瀬が犯人に質問をぶつけた。 工『動画の通りだ。48時間以内に身代金50億円。用意できなければ人質は死ぬ』 犯人は淡々とした口調でそう告げた。 工『窓口はあんたにしてもらう。身代金は現金で用意しろ。小切手や別のものに変えて運ぶのはダメだ。身代金の受け渡し場所は神明神社(しんめいじんじゃ)。時間は今から4時間後。一人で運ぶのは無理だろうから、数人で運んできて構わない』 犯人は流暢な言葉で要求を告げる。 工『もし現金が用意できなかった場合、交渉決裂とみなし、公開処刑を開始する。要求は以上だ。何か聞きたいことは?』 犯人はそう言って言葉を切った。 一「人質は無事なのか?」 一之瀬はそう質問した。 他のことを聞いても答えてはくれないだろうと思ったからだ。 工『今のところ無事だ。』 一「声を聞かせてくれないか?」 一之瀬はそう頼んだ。 工『…分かった』 犯人は一之瀬の要求をのんだ。 智『もしもし』 次に聞こえてきたのは、若い男の声だ。 一「木崎智哉君だね?」 智『ええ』 声を聞く限り落ち着いているようだ。 一「捜査一課の一之瀬です。怪我はありませんか?」 智『大丈夫です』 一「必ず助けるから安心してください」 一之瀬は力強くそう言った。 智『…刑事さん』 一「なんですか?」 智『僕のことより、父のことを調べた方がいいと思います』 予想外の言葉に一之瀬は言葉に詰まった。 一「どういうことですか?」 智『どう考えてもこの人たちは父に恨みを持ってる。僕は父がたくさんの人を切り捨てたのを知ってます。この人たちもそんな中の一人なんだと思います』 彼は落ち着いた口調でそう言った。 智『目の前の出来事ばかりに気を取られると、大事なことを見逃すということです』 彼は最後にそう告げた。 工『…さて、話は以上だ。では4時間後に』 犯人のその声を最後に電話は切れた。 部屋の中は、妙な静けさに包まれていた。
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