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<主人公 side>
子供が嫌いな親なんていない。
この言葉を聞くたび、俺は嘘だと思ってしまう。
それならば虐待なんて起こらないし、家族を殺すなんてニュースを聞くはずがない。
少なからず俺の親、正確には父親は俺を嫌っている。
木崎昭蔵(きざきしょうぞう)。
木崎ファイナンスの社長で、数百億円とも言われる金を所有している。
俺、木崎智哉(きざきともや)はそこの次男だ。
長男、木崎誠治(きざきせいじ)は成績優秀、容姿端麗でなんでもそつなくこなす男だ。
一方俺は成績はまぁまぁ、容姿も普通、簡単にいうどこにでもいる男。
父は兄を溺愛している。
次期社長としても、自分の息子としても。
兄にはいろんなものを買い与え、愛情を注いでいる。
俺には愛情なんて一切ない。
なにかを買ってもらったことなんてないし、どこかに連れていったもらったことなんてない。
父は俺のことをよく「出来損ない」と言う。
多分、本気でそう思ってるんだろう。
彼の妻、つまり俺の母親、木崎幸枝(きざきゆきえ)は父に怯えている。
そのためなにも言えずに父の言うままに動いている。
俺とまともに会話したことはない。
兄は俺に優しくしてくれている。
本当の兄弟のように 。
しかし、俺には今一つ信用できないところがある。
こんなにも違う弟を本当に愛しているのか、俺に優しくしているのは自分をよく見せるための計算なんじゃないか。
そう疑わずにはいられないのだ。
桜島は今日も灰を出しながら鹿児島を見つめている。
智「今日はこっちに灰が降らなきゃいいなぁ。」
そんなことを思いながら今日も1日が過ぎていく。
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