木崎智哉という存在

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一之瀬は車へ戻ろうと学校の廊下を歩いていた。 ?「あ、あの!」 後ろから突然声をかけられた。 振り返ると、1人の少女が立っていた。 ショートの黒髪にふんわりとした雰囲気を持った少女だ。 ?「もしかして、刑事さんですか?」 少女は尋ねた。 一「ああ、そうだけど」 一之瀬は素直に質問に答えた。 神「わ、私神崎さなえって言います。木崎先輩と同じ美術部に所属してます」 美術部。 一之瀬は智哉の部屋に置いてあったスケッチブックの絵を思い出していた。 風景画ばかりだったが、どれも美しいものばかりだった。 神「先輩は大丈夫でしょうか?」 さなえは恐る恐る聞いてきた。 神「あぁ、大丈夫。心配ないよ」 今はそう言うしかなかった。 少なからず、身代金の受け渡しまでは犯人も手を出さないはずだ。 でなければ、警察である俺を窓口にしないはずだ。 やつらすぐ人質を殺害するなんて短気なことはしない。 一之瀬はそう考えていた。 すると、彼女は急に泣き出した。 神「お願いします。木崎先輩を助けてください。先輩がいないと、私学校に来る意味無くなっちゃいます」 彼女は泣きながらそう言った。 彼女は愛しているのだ。 木崎智哉という人間を。 神「…大丈夫。必ず助けるよ」 一之瀬は力強くそう言って歩きだした。 身代金の受け渡しまで残り1時間を切った。
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