殺意

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一之瀬は一度署に戻り、園山殺害の状況について資料に目を通していた。 死因はナイフで刺されたことによる出血性ショック死。 現場に荒らされた様子はなく、物取りの犯行ではないようだ。 しかし、殺害された園山の部屋から驚くべきものが発見された。 木崎家の家族構成や資産状況、さらには身代金の受け渡し方法について書かれた紙が見つかったのだ。 それだけでなく、彼の預金通帳を見てみると、数ヵ月に1回、何十万と言われるほどの金が入っていた。 調べてみると、彼は数年前から会社の金を密かに横領していたようだ。 園山は木崎昭蔵に不満を持っていた。 昭蔵の尻拭いのために随分とこき使われていたようだ。 園山がよく通う飲み屋で店主に愚痴をこぼしていたようだ。 そんなある日、彼は犯人グループの誰かから話を持ちかけられた。 もちろん誘拐についてだ。 彼はすぐに話に乗った。 園山は犯人に木崎家についての情報を渡した。 そして犯人は身代金の受け渡しについて園山に話した。 園山が持っていた紙を見ると、身代金を燃やすことは園山自身は知らなかったようだ。 彼の携帯には正体不明の人物から電話が入っていた。 飛ばしの携帯のようで、誰からの電話かは分からなかった。 犯人と自宅で会った園山は殺害された。 彼は利用されたのだ。 園山が殺害されたことで、事件はさらに混乱を極めた。 ただひとつ明らかになったのは、犯人の目的は身代金ではないということ。 でなければ園山の殺害などあり得ないからだ。 しかし、だとしたら犯人の目的はなんなのだろうか。 園山の殺害は目的のひとつだったのだろうが、果たしてそれだけなのだろうか。 一「(…園山についてもう少し詳しく調べる必要があるな。)」 一之瀬は捜査員と共に園山について調べることにした。 動画が配信されてから約10時間。 外はすっかり闇に包まれていた。
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