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一之瀬は現在は使われていないライブ会場に来ていた。
木崎智哉の告発電話が終わった直後、今まで切られていた智哉の携帯の電源が入れられていることが分かった。
すぐにそこからGPSで追跡し、彼が匿われている場所を特定した。
ライブ会場の周りは数十人もの警察官が包囲していた。
警察官の他には、智哉の父である木崎昭蔵、母の幸枝、そして兄の誠治。
さらには彼のクラスメイトである霧島幸一と本田桜、後輩の神崎さなえも一緒だった。
一「(…犯人たちもバカじゃない。携帯の電源を入れたのはわざとだ。俺たちがここに来ているのも気付いているはずだ。)」
周りは緊迫した雰囲気に包まれていた。
合図があればすぐ突入する手はずになっている。
今にも合図が出そうな雰囲気だ。
その時。
ガチャ。
ライブ会場の入り口ドアが開いた。
なんと、出てきたのは誘拐された木崎智哉だった。
一之瀬は驚愕していた。
一之瀬だけではない。
周りにいる全ての人間が同じだった。
智「犯人は中にいます。全員武装はしていません。僕も怪我ひとつしていません」
智哉はそう言った。
一「…全員突入!」
合図とともに警察官が一斉にライブ会場に入っていった。
智哉のもとにも数人の警察官がやって来た。
誠「智哉!」
兄の誠治が智哉のもとにやって来た。
誠治の後ろでは幸枝が智哉を見つめている。
昭蔵の姿は見当たらない。
誠「智哉…」
智「話は帰ってからにしよう。今は色々騒がしいから」
そう言って智哉は誠治の横を通りすぎた。
誠「智哉!」
誠治は智哉を呼び止めた。
誠「たとえ何があっても、お前は俺の大事な弟だからな」
智哉は振り返った。
誠治はまっすぐな眼で智哉を見つめていた。
智哉は微笑んでまた歩きだした。
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