救出と真相

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巽「私は木崎に頼んだ。病院まで乗せていってくれと。するとやつは運転していた園山と会話を始めた。別荘を建てるうえで契約をしなければならずその時間に遅れるとかなんとか言っていた。話を終えた彼は財布を取り出し数十万の金をばらまいた。「それだけあれば診察を受けられるだろう。」と吐き捨てて。そうして車は去っていった」 智「……。」 巽「その1時間半後に救急車が来た。病院に着いた時にはもう息を引き取っていた。もう少し早く着いていたら助かっていたかもしれないと医者には言われた。そのあとだ。妻は体調を崩して1週間も経たないうちに亡くなってしまった」 智「…それからずっと復讐することを考えてたんですね。」 巽「ああ。木崎家の近くに家を買うのは苦労したよ。1人で計画を実行するのは骨が折れる。だから協力してくれそうな人間を集めることにした」 智「それが工藤たちだった。彼らは父に恨みを持ってましたからね。身代金に火を付けた人たちも同じ恨みを持った人たちですよね。それで5年経った今計画を実行したんですね」 巽「それも理由のひとつではある。けどもうひとつ理由があるんだ」 智「もうひとつの理由?」 巽「君だよ。智哉くん」 智哉は疑問を浮かべた。 巽「君が木崎昭蔵の息子だということは君から聞くまで知らなかったんだ。最初聞いたときは驚いた。もう会うのを止めようかとも思った。けど君は彼とは違った。私に優しく接してくれた。まるで息子ができたようだったよ」 智「…だったらなぜ復讐を」 巽 「…いつも娘の命日になると思い出すんだ。娘の笑った顔を。家族の楽しかった日々を。でももうあの日々は戻ってこない。だったら私にできることは、娘や妻の無念を晴らすことしかできなかった」 敬助は涙をこらえながらそう言った。
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