出来損ないと呼ばれる男

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11月になると学校は騒がしくなるものだ。 僕の通っている学校も例外ではない。 文化祭の準備でザワザワしている。 現在は昼休みだ。 ?「智哉、一緒に弁当食おうぜ。」 智「OK。」 彼は霧島幸一(きりしまこういち)。 見た目はヤンキーっぽいが、性格は優しい。 サッカー部のエースだ。 俺たちが弁当を食べるのはいつも屋上だ。 静かだし空気が旨い。 智「昨日試合だったんだろ?どうだった?」 霧「勝ったよ。俺の華麗なシュートでスパーっと。」 ?「何言ってんの?こーちゃんシュート一本も入らなかったでしょ。」 霧「ちょっ、言うなよ桜!」 霧島を「こーちゃん」と呼ぶのは、本田桜(ほんださくら)。 サッカー部のマネージャーだ。 この二人、お互いが好意を持っている。 端から見ると分かりやすいくらいに。 しかし、どちらも言い出せないでいる。 友達の観点から言わせてもらうと、早く付き合ってほしい。 間に挟まれてる俺の身にもなってほしいものだ。 そんな二人の会話を聞きながら、俺は黙々と弁当を食べていた。 俺は美術部に所属している。 自慢じゃないが、絵は得意な方だ。 俺は放課後は毎日美術部に行って絵を描いている。 家に帰るのが嫌だというのもあるが、単純に絵を描いてるのが楽しいからだ。 今日も変わらず絵を描いている。 美術部は基本部活に来る人は少ない。 たまに部員全員で先生の指導を受けたりしているが、それ以外は来たいときに来て、絵を描くというスタンスだ。 部活としてどうなんだろうか。 割りと熱心に部活に参加しているのは、俺ともう一人、後輩の神崎さなえ(かんざきさなえ)くらいだ。 今日は用事があったようで来ていないが。 彼女には絵の才能がある。 「コンクールに出したらどうか」と言っているのだが、「自分なんてまだまだです。」と言われるばかり。 彼女は少々引っ込み思案な性格だ。 もうちょっと自信を持ってもいいと思うのだが。 せっかく可愛いのだから。 本人にこれを言ったらゆでダコみたいに赤くなるだろうが。
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