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日本でハロウィンが、受け入れられる。一般的になる。盛り上がる!
・・・数十年前には、まったく思わなかった。そもそもハロウィンという単語自体、知らない人間が多かったのだ。
しかしまあ、どうだろう。今やその季節になれば、その辺のスーパー・コンビニ等にも、『ハロウィンコーナー』が設けられるし。ニュースではもの凄い数の人間が、各々凝ったコスチュームで都心各所を練り歩く光景が映し出されるようになった。
そうして。その余波はTVやネット上だけじゃあなく、地方都市のそのまた外れにある我が家の前の通りにも、及んでいるというわけだ。
仮装した子供たちがかわるがわるーー時にはちいさな集団で通りを往来し、我が家にも訪れるのだから。
菓子類の入った大袋を手に、夕方から何回目か分からない
「とりっくおあとりいと(お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ)!」
の甲高い声に応えてから、私はちいさな声でつぶやいていた。
「ようするに、時代が変わったわけさ・・・」
と、言ってもだ。ちいさな住宅街だし、通りの長さだってしれている。
どうやら離れたところにある広場に集まって、キャアキャアと可愛らしい声をあげている様子の、子供たちの仮装もチープなもの。昨年、妻を亡くし、体調を崩して仕事も一時退いている私にとってはちょうどいい暇つぶしと言えなくもない。
そうだ。そのはずだった。
それ以外、何も起こるはずのない郊外住宅地の、ささやかな催し。
地域の子供会が音頭をとっている安全無害なプチイベントーーそれ以上でも以下でもなかったはずなのだ。
はずだったのだが・・・。
残照が消え失せ、澄んだ星空だった。風が少し冷たいがーー絶好のハロウィン日和だ。そんな言葉があるのかどうか知らないけれど。
「ん?」
袋を持って、玄関に引き返そうとした私は、門柱の陰で何かが、
がさっ
と、動く気配を感じた。
小柄な人影が、そこにいた。子供?
たった今のグループの一人が、まだ立ち去らずに残っていたのだろうか? それとも引っ込み思案で、そういったグループに入れなかった子供だろうか?
私もどちらかといえば、児童期は後者だったのだが。
・・・門柱の上の灯りが、人影を照らし出す。
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