とりっくおあとりいと!

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 オレンジのマスクに、黒いマント姿。 マスクは例によって、あのオレンジのかぼちゃのヤツだ。材質はわからないけれど、三角の眼と鼻とギザギザの歯の口が、黒く浮き上がっている。  子供たちの多くは百均調達の、それこそお手軽仮装なのだが。それよりはずいぶんマシなーー頭からすっぽり被るタイプだ。こういうのはいくらくらいするのだろう?  マントも、体をこれまたすっぽり覆っている、それなりに本格的な代物。ひょっとしたら母親か誰かのハンドメイドかもしれない。  そこまではーーまあ、いい。  広場に子供たちが集まり始めているということは、地区の『子供たちのハロウィン』も、そろそろお開きということだ。都心部ではそれこそ『ハロウィンの夜』はこれからが本番。終夜営業で、警察なども巻き込んで騒ぎが続くのだろうが。  そのお開きの前に少し引っ込み思案の子供が、やや遅れてやってきたーーにしては。  どうにも気になるところがあった。  その子は、マスクの『かさ』を省いても、せいぜい私の腰のあたりまでの背丈だった。  顔はもちろん見えないが、小学校低学年。いやいや、もしかしたら幼稚園児かもしれない。私が180㎝の長身だとしても。  その背丈をはるかに超える『もの』が、マントの隙間から上に伸びている。  カマ、だ。  草刈に使う、あんなちいさな代物じゃあない。  柄というべきか。それだけでも2m近く。さらに、その先についている刃が尋常じゃあなかった。  細い、鋭い刃。それが湾曲しながら光っている。  ゆうに1m。いやいや、もっとあるだろう!  なんともいえない迫力だった。  もちろん、これは模造品なのだろう。ハロウィンの仮装に『得物』は小道具としてつきものだ。小悪魔等の扮装に、やはりチープで無害な得物を皆、携えている。  だがしかし。  これはーーちょっと。いや、かなり! やりすぎじゃあないだろうか。  柄は金属製に見えるし、刃もーードキドキとした光を放つそれは、どんな塗料を使用しているのかわからないがーー『本物』に見える。  たとえそれがメッキだとしても、いただけない。この先の尖り具合なら、ベニヤ製であっても凶器になり得るだろう。地区の子供会は、そういった点を神経質なほど規制していたはずだ。万が一の事故がおこらないように、と。
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