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ヒラヒラと桜が舞う中、歩いていた足を止めて思わず見上げる少女が1人。
「うわ~、今年も満開だ」
淡いピンク色に花を咲かせる桜を見つめ、彼女-松居綾は声を漏らした。
「ずいぶん大きな独り言だね」
そんな綾の後ろから声が聞こえ、振り返ると男の子がクスクスと笑いながら近付いてきた。
「亜輝先輩!?え!?やだ…!聞こえていたんですか!?」
綾はやって来た人物―亜輝に独り言を聞かれていたことに恥ずかしくなり、持っていたカバンで思わず顔を隠した。
「あんな大きな声で言っていればね。でも、言いたくなる気持ちも分かるよ。この並木道は毎年桜が綺麗だからね」
そう言って桜を見上げた亜輝の横顔を、綾はジッと見つめた。その視線に気付いてか、亜輝も綾に視線を向けると、優しく笑顔を向けた。
「あ、あの!おはようございます!亜輝先輩」
「うん、おはよう」
見つめていたことに気付かれた恥ずかしさを誤魔化すように、綾は今更ながらの挨拶をした。
そんな綾に亜輝も笑いながらも挨拶を返し、2人は一緒に並んで歩き出した。
「そういえば、朝に会うのは珍しいね」
「今日はクラス替えの発表もあるし、早めに行こうかと思って」
「あー、そういえばそうだよね」
「3年生はクラス替え無いんですもんね」
「そう。だから2年生のクラス替えが大事だよ。これで残りの高校生活が全部決まっちゃうからね」
「そう言われると怖くなるなぁ~…」
「そのドキドキ感も味わうのが最後だから、それも含めて楽しめば良いよ」
「先輩、他人事だと思ってませんか?」
「…まぁ、自分のことではないからね」
「ひーどーいー!」
そんな他愛ない会話で笑い合いながら、2人は学校へと向かった。
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