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VIDEO IS ALIVE
私は荷物整理をする。
妻が小学六年生の娘の準備を手伝ってるようだ。
「お父さん、そろそろ娘出るわよ?」
妻が物静かに私のいる部屋に近寄り、話しかけてくる。
「おぅ」
私は玄関前に駆け寄る。
「そんじゃ、行ってくるね。父さん、母さん」
「ファイト、咲良」と母親。
「頑張れよ?俺らも後でちゃんと行くからな」と私が言うと、娘は「右手を出して」と言い出した。
私は言われるがままに手を彼女の前に差し出す。すると彼女は私の手の甲に柔らかい唇を軽くくっつける。
「約束を破ったらその手、痛くなるからね。じゃあ、またね」
私はその場で妻と共に彼女を見送った。扉を閉じた後に手の甲を見つめた。
「あらあら、良かったわね。かわいい一人娘にチューされて」
こちらを見て何やら嫉妬してるのを抑えるかのような声を出す妻。そんな彼女に逆側の手を差し出して私は諭す。
「お前もする?」
「何言ってるの?死ねば?」
「ははっ。少し冗談きついよ」
「まったくもう。そろそろ私たちも出るわよ?」
私たちはそれから残りの準備や身だしなみを整えて外に出た。秋の涼しい風が私たちの体を靡く。そして小学校の会場に辿り着いた。
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