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建物を前に大きく広がる砂利の校庭。他の親達もまた集まっていた。
「ねぇ、ここにしましょ?」
「もっと近くでもいいんじゃない?」
「そう言って前回応援しに来た時、砂まみれになったの誰のせいでしたっけ?」
「いや、あれは風が急に吹き始めて……」
「問答無用」
妻の得意技、膝カックンが私の膝裏に命中する。砂利がもろ足に当たり痛い。
「仰せのままに……うぅ……」
私はそこにビニールシートを広げて風に飛ばされないように四隅に小岩や荷物などを置く。
そしてカバンから動画を撮るためにビデオカメラを手に持つ。
「あら、それ。私と咲良が誕生日にあなたに買ってあげたものだらけね」
「あぁ」
小学四年生になる時に彼女たちからこのピンク色のビデオカメラを貰った。そしてその翌年にはこのビデオカメラの端っこにくっついているラーメンを食っているアザラシの柔らかいクッション製のストラップがぶら下がっている。
一応、私の顔にカメラレンズを近づけて取れてるか確認するために一瞬だけ撮った。
その後、私たちは知り合いを見たら挨拶や話しをして時間を潰していた。
「あっ、始まるわね」
しばらくしてから妻はそう呟いた。
『選手入場!!』
女子学生がそう言う。
私はカメラを出てくるであろう入り口に向ける。
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