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最高学年だから最後に出てくるのだろうが、それでも逃さないようにそのまま構えて撮る。
「さくらー、こっちよー」
妻がそう叫ぶ。どうやら、カメラや自分たちがここにいることをアピールするためだろう。正直言って、私的には少し恥ずかしい。他の人々も似たようなことをしていたのであまり気にはしなかったが。
「玉入れと徒競走と騎馬戦と綱引きとチーム対抗リレーだよね」
「あとあなたがいつも寝ているダンスね」
「あったっけ?そんなの?」
「あるわよ、もう。女の子はそういうの好きなんだからちゃんと見てあげなさいよね?じゃないと私があなたが寝た瞬間からこの運動会が終わるまで踊るからね。あぁー、そんなことしたらあの子、いじめとかあうだろうね。それどころか私たち、嫌われるかもねぇ。せっかくチューされたのに」
急に玄関前で娘の唇を手の甲に当てた部分が痒くなる。
「はいはい、分かりましたよ。寝ませんよ」
「はいは一回よ?」
「はいよ」
「よろしい」
そんな話をしてたら玉入れの入場する瞬間だった。
「じゃ、前に行こうかな」
「えぇ」
私はそう言ってビデオカメラを持って観客席の前あたりにしゃがみこみカメラを構える。
彼女は他の生徒達と共に出て、赤い柔らかい布で出来た玉を投げる。
そんな彼女を撮り逃さないようにカメラで追っかける。
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