第五章 告白

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〈匠44〉  着替えを上原の家に取り行き、それから俺のマンションに行くことになった。上原の住んでいるワンルームは二人で過ごすには狭すぎる。  初めて見た上原の住んでいるマンションは割と新しい造りだった。簡素な住宅街に建っている。駅のこちら側は住宅街だったんだと初めて知った。  「た、匠さん、部屋にあがられますか?」  名前を呼ぶ度にまだ緊張してるのがわかる。べッドの中での乱れ方がこの姿からは想像つかないと、昨日の夜を思い出す。  「いや、ここで待ってるよ。いっておいで」  階段の近くに立って仔犬が跳ねて階段を上がるのを見ていた。  少しすると、上品な女性が軽く会釈して横を過ぎた。こんな人も住んでるのかと興味半分で見ていたら上原の部屋の前に立ち止まった。  「蓮?いるの?開けて、母さんよ」  上原の?まずい、この場を離れないといけない。  ドアがかちゃりと開くのが見えた。  「何しに来たの?ここに来ることなんてなかったじゃん」  明らかに不機嫌な声がする。  「大きな声出さないで、とりあえず上がるから」  その女性は上原を押しのけるように中に入って行った。どうしようかと少し考えて、上原に自分のマンションに先に戻っているからとメールする。そして静かにその場所を離れた。
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