第六章 世間と言うもの

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<蓮47>  主任の息が当たって首筋がくすぐったくて仕方ない。大人しく座っていたくても、ついもぞもぞと動いていまう。つと、首筋を舐められた。  「あっ、ん」  自分の声なのにトーンがいつもより高くて驚く。  その声をスタートの合図のように床に転がされ上から押さえつけられた。もう、何も出ない。絶対に無理だと思っていたのに結局、ベッドまで抱えられる。  気が付くと泣きながら、喘いでいる自分がいて驚愕する。結局意識がなくなって落ちるまで解放してもらえなかった。  思考までぼんやりとして、結局日曜日はベッドから起き上がることさえできなかった。  主任と付き合っていたら体もたないですと伝えたら、セックスしてたら体力もつくだろと笑われた。日曜日の夜は抱きかかえられるようにして、狭い風呂に入れられ、手を繋いで眠った。  朝目が覚めた時に目の前には綺麗な寝顔が、こっそりと柔らかな唇に近づこうとした時に主任と目が合った。  「えっ?いつから起きていらしたんですか!」  「おはよう、起きたのは一時間くらい前かな。お前の顔見てたよ。名残惜しいがそろそろ準備しないと会社に遅れる、朝飯食ってから出ようか」  準備をしながら恋人の顔から、いつもの主任の顔に変わっていた。  なんだか寂しい。  そう考えていたらカチヤリと何かがテーブルにおかれた。  「これ鍵な、お前の方が先に帰るから」  帰る?ここに今日も帰れるんだと思うだけで、今日一日の仕事を頑張れそうな気がする。夢のような週末は終わったと思っていたのに嬉しくて仕方ない。  「鍵の受け取りってことで認印、ここな」  そう言って主任はいたずらっぽく笑って自分の唇を指差した。近づくとグッと引き寄せられて口内を犯された。  それだけでがくんと腰が抜け、座り込んでしまった。  「さて、充電完了だ。出かけるぞ、蓮」  やっぱり、体がもたない……そう改めて思った。
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