第六章 世間と言うもの

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〈蓮51〉  自分の欲の深さに驚く。与えられれば与えられるほど飢えを感じて、貪欲になる。  セックスに淡白だと言われていたし、自分でもそう思っていた。それは知らなかったからだと気がついた。相手もそこに気持ちが無いことを気付いていたのだろう。  「蓮、そろそろ食事しないと、明日になってしまうよ」  今日はもう終わりだと言われたようで、寂しかった。見上げると主任が「全くお前は」と、声を立てて笑い出した。 「せっかくのカレー食わしてくれよ、餓え死にする」  主任が髪を優しく撫でてくれた。  立ち上がってカレーを温めながら、急に恥ずかしくなったてきた。俺って、どんだけ。主任はあきれていることだろう。本当にどうしよう。  「蓮、そんなに混ぜなくて良いから」  後ろからそう声をかけられて気がついたが、俺は鍋をひたすらぐるぐるとかき回していた。  「ん?どうかした、顔が赤いよ」  余計な事を指摘されて、更に恥ずかしくなってしまった。  カレーを皿によそうと、主任に渡した。口に運ぶ様子を真剣に見つめる、大丈夫だろうか。何しろお湯を沸かす以上の事は一度もチャレンジしたことがないのだ。  「美味しいよ」  主任のその一言にほっとした、誰かに喜んでもらえるってこんなにうれしい事なんだ。  料理なんて、自分のためならやりたく無い。でも、主任に喜んでもらえるならまた頑張ろうと思える。  一緒にいて分かった事。  俺は主任の声が好き、笑う顔が好き。不安になる時、強く抱きしめてくれる腕の中が好き。そう言うより主任の全てが好きだ。  ずっとこのまま、絶対に変わらない。
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