第一章 仔犬との出会い

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<蓮5>  ぶかぶかのスエット上下にサンダル履きという奇異な格好で今俺は主任と並んで歩いている。ショーウィンドウに映った自分の格好に恥ずかしくなる。  日曜日の新宿はいろいろな人がいる。俺みたいな格好でも溶け込んで行けるような気がした。大丈夫決して変ではない、はず。  そう、目立ってはいない気がしていた。主任の行きつけのショップに連れて行かるまでは。明らかに浮いている、恥ずかしくて穴があったら入りたいと思った。  ほとんど人のいない、店内ですました顔の店員は仮面のような笑顔で対応してくれる。けれど、その目の奥に「なぜこんなところに」と怪訝な色が浮かんでいたのは間違いない。  そもそも何で主任のコートが先なんだろう。こんな格好でくるような場所じゃないのに。  「で?上原がコートを見立ててくれるんだよな」  主任は面白そうに俺を見ながら言う。プライドの高そうなショップ店員さんの前でこんなスエット姿。お前そんな格好でと、心の中では嘲笑っているはず。  「主任、タイトなシルエットのスーツが多いですよね。チェスターコートとか似合うと思うんですが」  店員さんが「ふん」と言う顔をしてる。普段はこんな格好してない。服にも気を使ってるのに。  ニットにコートを羽織ったら主任は素敵なはず。定番のキャメルも良いけど、主任はやっぱりネイビーがいい。  ああ、買い物はやっぱり楽しい。
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