第一章 仔犬との出会い

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 会社の部下では余計に捨て置けない。何とか側溝からは引き上げたものの、足元と背中は泥で汚れてしまっている。そして事もあろうか、俺にしなだれかかるようにして眠ってしまった。  「で、こいつをどうするんだ……」  上原の住んでいる場所なんて当然知らない。仕方なく自分の部屋まで引きずるようにして連れて行く。泥だらけのズボンと上着を玄関でやっと脱がせ、下着にシャツとネクタイという姿の新人をベッドへ放り投げた。  体が軽くて良かった。というより、ちゃんと飯食っているのか分からないほどだ、軽すぎだる。ベッドの上で苦しそうにネクタイを引っ張っていたので、解いて緩めてやる。そして、外してやった眼鏡と一緒にリビングのテーブルに移した。  「これも、やだっ」  駄々っ子のようにシャツの襟を掴んで引っ張るので、仕方なくシャツも脱がせてやる。一瞬起き上がり、にっと笑うと上原は倒れこむように眠ってしまった。  出張の疲れが倍になった、今日は向こうに泊まれば良かったと後悔した。玄関の泥だらけの上原のスーツをバスルームに放り込む。  ごとんと音を立ててズボンのポケットから落ちた携帯を拾い上げた。  荷物は、これだけなのか。  財布は?    そう言えばビジネスパックは?  思い返してみたが何も側溝の所には落ちていなかった。     
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