第四章 足踏み

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<匠28>  俺を待ってる?紺野が?ありえない。  今までの付き合い方でも待つのは常に俺だった。紺野は縛られるのも縛るのも嫌だと考えている、お互い自由に必要な時に一緒に居れば良いと常に言っていたし、実際そう行動していた。  「悪い上原、どこで待ってるって?」  「え?会社の前のところでお待ちですけど」  仔犬が答える。上原がわざわざ嘘をつく必要なんてない、分かっているが不思議でしかなたい。  よほどの事があったのかもしれないと、デスクを急いで片付ける。例え別れたとは言え十年もの長い時間を共有した相手だ。  「ありがとう。お前、約束あるんだろう。間に合うか?悪いな。」  「大丈夫です」  そう答える上原の顔が歪んだ。泣きそうに見えたのは俺の見間違いだ。  「では、主任、今度こそお先に失礼します」  上原の後姿を見送った。携帯を取り出して着信履歴にある見慣れない番号を押す。ワンコールで紺野が出た。  「ねえ、今日は追い返さないで。お願いだから」  いつもの紺野じゃない。何かあったのか?その一言で電話は切れた。  荷物を持って会社の外に出る。ガードレールに腰掛けた紺野が手をあげた。少しやつれたように見えた、そしてつらそうに見えた。この前会った時は良く見えていなかったのかもしれない。
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