第一章 仔犬との出会い

7/30
前へ
/406ページ
次へ
 木下の話が本当なら(まあ本当なのだろうけれど)飲みすぎだと止める同期のみんなに、このくらいじゃ酔わないと豪語し、酔ってない証拠に走れると言って走ったらしい。  そのまま酔いが更に回って、同期の女子にもたれかかって吐きそうになっていたのだという。  手に負えないと判断した木下が流しのタクシーを捕まえて、俺の住所を伝えて乗せたとらしい。なのになぜか主任のマンションの側溝にはまっていたのだ。  「あの、タクシーで自分のアパートに帰ったはずなんですが」  「俺は知らん。とりあえずクレジットカード止めろ、後は警察に電話して落し物が届いていないか問い合わせてみるんだな」  主任に言われてクレジットカード会社の番号を調べ電話する。すぐに警察にも連絡をするが昨日の記憶がほとんどない状態ではどうも説明がつかない。とりあえず届け出を出しに交番へ後で行くことになった。  家に帰りたくても家の鍵も無い、一体どうしたらいいんだろう。現金もなければ、カードもないこの状況なのだ。  「不動産屋に電話してみろ、合鍵が置いてあるはずだ。月曜日なら銀行も通帳があればお金はおろせる。社員証は再発行の手続きすれば良いだろう」  主任がいてくれて本当に良かった、一人じゃパニックで何もできなかった。     
/406ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1008人が本棚に入れています
本棚に追加