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先々週のこと。
いつものごとく支度を済ませて朝飼い葉の前の軽い運動するために厩舎から出てきた私は、驚きのあまり立ち上がってしまった。
「どこ行く気よ、ミズキンダ?」
彼女は背中に笹緑のちっさいリュックを背負い、農場の囲いの柵出入り口から出るところだった。
「帰る」
「まてやこらあ!」
馬の足を舐めてはいけません。
瞬間秒速800メートル。背中にがつっと足を乗せて引き留めたわ。
「なんでよ?約束したじゃない、共にスペインへって。てか来週には行くんだけど」
「行かない」
「だからなんで?」
首だけよっこいしょっと振り返り、ミズキンダ曰く。
「飯がまずい」
あ?
ワンスモア、プリーズ。
「飯がまずい&足りない&ムチ」
…………。
みんなの三倍食ってるし。叩かれてんの私だし。
「これって動物虐待よね」
…………。
あんたジョッキーだよね。
「コンビニ店員に戻る」
…………。
やる気ナッシング店員にかい?
「給料はパンダ銀行に私の名義あるから振り込んどいて」
ブチッ!
「今更何いっとんじゃああああぁ!」
勿論くんずほぐれつ取っ組み合いの大喧嘩。
快くん、いや先生は昨日の夜から遠征の前日まで出張でいない。
あんた狙ったわね!
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