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奇遇
「亮ー。」
可愛らしい、顔立ちのせい、だろう。
何かにつけ、いじめられる、和晃は。
泣きながら、俺に、走り寄ってきた。
俺は、和晃を、包むように。
そっと、抱きしめた。
俺の肩に、顔を、こすりつけた、和晃は。
落ち着くまで、離れなかった。
俺が、和晃を、守る。
子どもながらに、そう思っていた。
それは。
和晃の妹が、学童に入るころまで、続いた。
中学が、違う。
それが、どういう意味を、持つのか。
俺は、理解して、いなかった。
保育園。
学童。
ずっと、一緒だった。
確かに。
和晃は、小学4年から、塾に、通いだして。
学童を、休むことが、増えていった。
でも。
ずっと、一緒にいられると、思っていた。
そして、気がついた。
俺たちが、一緒にいられたのは、必然ではなく。
寄寓だった、ということを。
そのことに。
失ってから、初めて、気がついた。
和晃が、いなくなった、ことが。
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