完璧主義の私

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完璧主義の私

 十一月中頃。季節は秋から冬へと変わっていく。暖かい日は少なくなり、寒いと思う日が日に日に増えていくのを肌で感じる。私の場合は朝が最も感じる時間帯である。完璧主義の私は常に体の気を使っている。だから、布団はしっかりと二重三重にし、風邪をひかないようにする。しかし今朝は起きると違和感があった。いつも一緒に寝てる妻が今日は隣にいない。妻は専業主婦で私が働きに出ている。子供はいない。できない原因は妻ではなく私だった。そのことを知ったときはその場で泣きたいくらいつらかった。妻は子供好きで、結婚する前に二人は欲しいと言っていた。私は何度も何度も妻に謝った。すると妻は、私を抱きしめ、あなたがいればいいよと言ってくれた。この言葉にどれだけ救われたか分からない。それから数十年ともに仲良く暮らしてきたはずなのに、今朝目が覚めると隣に妻がいなかった。台所にいるのかと思い行ってみるとそこには影の一つも無かった。では居間かと覗いてみると、そこにもいない。不安になった私は家中を探してみた。が、妻の姿はどこにもなかった。外へ行ったのかと思い玄関で靴を確認すると、きれいに並べられてあった。私の中で不安がどんどんと大きくなっていく。冷静を保とうと、一度深呼吸をした。妻が昨日何か言ってなかったかを思い出す。そういえば昨日は、妻が珍しく機嫌がよく一緒にお酒でも飲まないかと誘ってきた。今ある頭痛から察するにかなり飲んだのであろう。確か最初はたわいもない話だった気がする。
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