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0.プロローグ
中学2年生になった冬の夜、川島皐月は塾で授業を受けていた。
「じゃあ、ここはわりと学校のテストでも出やすいから、ちゃんと復習しておくように」
講師の田中先生の言葉と共に授業が終わり、生徒達はざわざわと教材を片付け帰る支度を始める。
「皐月、一緒に家まで乗せて行こうか?」
親友の奈美子が声を掛けてきたが「大丈夫、迎え呼んでるから」と皐月は断った。
コートを着てマフラーを巻いていると、夜空にちらつく白いものに気が付く。
「あ、初雪だ」
もうすぐクリスマスだ。ここ数年は暖冬のせいもあって1月くらいに雪を見ることが多かったが、今年は珍しい。
マフラーに顔を埋め、皐月は外へ出た。風は出てないが、外の空気はキンと澄み切っていて冷たい。雲の隙間からオリオン座が見えた。
親の車を待っていた生徒が1人、また1人と帰っていく。声を掛けてきてくれた奈美子も帰り、結局皐月は最後の1人となってしまった。
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