第1話 一輪の花

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第1話 一輪の花

 戦後最大とも言われる残虐な事件が都内で起こった。M、S、Rの3人の女性を殺害し、それをバラバラにした。被害者Mの頭部、被害者Sの胴体、被害者Rの手足を接合した異様な死体を造った異常な男が犯人として逮捕された。  その男は、逮捕後にこう語った。 「被害者3人は血肉の花弁だ。彼女たちが揃うことで美しい花を咲かせることができた」  俺は新橋卓郎、34歳。職業はアイドル事務所のプロデューサーをしている。  事務所は大規模ではないにしろ、近年では勢いをつけ始めた中堅事務所と言っていいだろう。  今も目の前に広がるステージ上では俺のプロデュースするアイドルが客を魅了している。 「お疲れさま。今日のステージはどうだった?」  俺はステージから引き揚げてきたアイドル・真衣の頭にタオルをかぶせる。 「うん、すごく楽しかった。お客さんは……まぁいつも通りって感じだけど」 「そうか……」  真衣はタオルで顔を乱暴に拭きながら言う。 「いつも通り」とは、今日も空席が目立ち、客の盛り上がりもイマイチということだ。  真衣は前座のようなものだ、仕方がないと言えば仕方がない。     
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