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「そうじゃない。ただ、それによってはお前の今後の方向性とか仕事の内容も考えなきゃならない」
真衣は鬱陶しそうに煙草を吸いながらメニューを眺め、俺とは目すら合わせない。
「別に、私適当な時期に辞めるつもりだし。だって元々私モデルだよ? アイドルなんかで終われないって。方向性で言うなら、女優とかミュージシャン辺りかな~」
「では、今の活動は腰掛けって事か」
「ま、そんなとこ。だから間違えても28歳でアイドルなんかやってないから安心してよ」
俺はテーブルの下で震える拳を抑えるのに必死だった。
アイドルなんか? 腰掛け? この女にとってアイドルとはその程度なのか。
この女は、俺の目の前でアイドル、そして真衣を侮辱した。つくづくアイドルに相応しくない屑だと思う。
だが、こんな屑でも1枚の血肉の花弁として、花を咲かせるには不可欠な存在だ。
「……耐えろ、まだ耐えろ」
「……え?」
俺は無意識に拳を押さえつけながら口走っていた。
「いいや、なんでもない。ほら、今日はとことん付き合ってやる。好きなだけ飲め」
それを誤魔化すように俺は里香にメニューを押し付ける。
もう、里香を血肉の花弁へ「加工」するための準備は始まっている。
「……気持ち悪い」
居酒屋を出るころには里香は完全に酔っていた。
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