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悲劇のヒロイン
5年前、僕の幼馴染が誘拐された。公園で、僕の目の前で。
捜査は難航し、今でも彼女は見つかっていない。
彼女は僕の目の前で男に連れ去られた。責任を感じた僕はショックでしばらくは食事も出来ず、外にも出れなかったが、5年という歳月が僕の心を癒した。
彼女には悪いと思うが、高校生らしく友達も作り、部活に打ち込み、そして彼女もできた。
けれど何人違う女の子と付き合っても、幼馴染の亜希への好意が薄れる事はなかった。
そんなある日、朝から母親が血相を変えて僕の部屋に駆け込んできた。
「亜希ちゃんが見つかったって……」
一瞬、誰の事かと思った。
けれど、すぐに思い出した。亜希、5年前に姿を消した僕の幼馴染。
その日、すぐに僕は亜希の入院する病室へと足を運んだ。5年ぶりの再会という事もあり、少し緊張もしていたが、病室へ入った瞬間にその緊張は吹き飛んだ。
「久しぶり……だね」
ベッドに腰掛けている少女は紛れもなく亜希だった。
5年前からは大人びており、より女らしい雰囲気になっている。
だが、僕の緊張を吹き飛ばしたのはそんなことではない。
僕の幼馴染には、左腕がなかったのだ。
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