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「鎖で左腕を縛られててね、逃げるために自分で左手を切り落として逃げるしかなかったの」
何を使って、どうやって自分の左腕を切り落としたのかは怖くて聞けなかった。
「……けどね、別に逃げる必要は無かったんだ。誘拐されて監禁もされてたけど、私に溺愛したおじさんだったから何不自由なく生活もできてたし、私もあの生活に不満はなかった。ましてや左腕を捨ててまで逃げ出すような場所じゃなかった」
「なら、どうしてそんな犠牲を払ってまで」
「君が好きだから」
彼女は笑顔でそう言った。その笑顔は少し悲しそうだった。
「私を見て可哀想、不幸な子だって同情したでしょ?君は優しいから、私みたいな哀れな子に同情する、憐れんでくれる。だから、そんな私のお願いを断ろうなんて思わないよね」
彼女は、逃げ出すために左腕を切り落としたのではない。可哀想な、哀れな、悲劇のヒロインとなり、それを武器にして僕に告白をしている。
「……君が好き。私の左腕としてずっとそばにいて。可哀想な幼馴染の、たった一つの願いだよ」
そんなの、断れるわけがないじゃないか。
僕は頷く。そして、静かに一言告げた。
「そんなことしなくても、僕は君が好きだったよ」
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