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10歳以上も年齢が離れ、趣味が共通しているわけでもない2人の共通の楽しみは、知的会話による意思の交換だった。もっとも、学問上は天才と言われる朱音のコミュニケーション能力は高くない。むしろ言葉足らずで独りよがりな話が多く、世間から見ればコミュニケーションが下手な人物といえた。それゆえの敵もいる。 「超能力?……透視とか念動力といったもののことかな?」 千坂は、朱音の髪を優しく撫でる。意思疎通に必要なものは言葉だけではない。何よりも心を開ける信頼が重要だ。その信頼関係が2人の間には成立していた。 「うん。千里眼とかテレパシーとか瞬間移動」 「生身の身体での瞬間移動には疑問があるけど、20世紀の冷戦下にアメリカとソ連、……今のロシアだけど、2カ国は真剣に研究していたらしいね。透視や念動力については動画もある。もちろんトリックが使われた可能性もあるけれど、素直に信じれば超能力を否定はできないね」 「史実はともかく、あなたは、どう思うの?」 「動画があるといっただろう。超能力はあるのさ。でも、実用化できるようなものじゃないだろうね。僕だって持っている」 「えっ。知らなかった。どんな超能力?」 「テレパシーに近いね。人の心を読むことができる」 「そうなの?……なら、今、私が考えていることを当ててみて」
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