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希望を拒絶したことを詫びるように、千坂は姿勢を変えて細い指で朱音の肌をそっと撫でた。そして2人は、普通の恋人たちと同じように肉体的に結び合う。 千坂の寝息が聞こえてから、朱音はベッドを抜け出した。セックスの後はトイレでビデを使うのが習慣だったから千坂も目覚めない。 朱音はゴミ箱を持って寝室を出ると、自分の書斎に入って千坂が捨てた避妊具を拾い保温ケースに入れて寝室に戻った。 千坂の生死の健康状態を確認したり、それを使って体外受精したりすることはこれまでも可能なことだった。しかし、千坂の希望に従って我慢してきたのだが、それが出来なくなっていた。 朱音もまた千坂同様に自分の信念に素直な人間だった。朱音の我慢が限界を超えたのには、時代と共に進化した医学と遺伝子技術があった。
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