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挨拶も苦手だが、誰かを何かに誘うのもまずい位苦手だ。
アルクが訝し気にこちらを見ている気がする。そうじゃない。そうじゃないんだよ。
「い、いや、そうじゃなくて、旅の準備をしないとならないから薬草は必要だし、兎に角人目の無いところで一度ちゃんと話をしたほうがいいと思うんだけど。」
なんていうか、訳が分からなくなって兎に角、人目の無いところに行きたくて、もうどうにでもなれと右手の人差し指をくるりと回す。
俺と、アルク、それからユナの足元に青く光る魔法陣が浮かび上がったのは直ぐだった。
「ちょっ!?転移魔法!?詠唱無しで発動させるなんて!」
ユナが悲鳴を上げる。そんな事を言われても術はすでに発動して、ここからふた山向こうの山の中腹と繋がっている。
一秒後にはもうそちらに転移が完了しているだろう。
まばゆい光に飲み込まれる感覚に思わず瞬きをすると次の瞬間、そこはもう街道ではなかった。
しかし、山の中は山の中ではあるのだが、これは想定外だった。
目の前には小型のドラゴンがいてこちらを威嚇している。こんな場所にいる筈の無いモンスターの出現に思わずたじろいでしまう。
はあ、と静かに溜息をつく音が隣から聞こえた。
刹那、アルクが一歩前にでる。
正に一閃。剣を鞘から抜いたことにも気が付かなかったが、龍が目の前で両断される。
「すげえな……」
思わず呟くと、横でユナがフルフルと震え出す。
「アンタ達一体何者なのよ。」
いや、引きこもり魔術師としか返しようが無く、思わずボリボリと頭を掻いた。
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