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ユナは、顔に手を当て溜息をついた後手をを下ろし、こちらを睨み付ける。俺はアルクと顔を見合わせて肩をすくめる。
ドラゴンは切断されてもビクビクと痙攣を繰り返している。この手の生き物は大体そうだ。心臓を取り出してもまだ脈動を続ける個体も珍しくない。
こういう時に全然違うことを考えてしまって、それで時々それを口にしてしまうから空気が読めないとか気持ち悪いって言われるのだとさすがに気が付いている。
でも今はそんな話じゃなくて、ただ、静かな場所で話をしたほうがいいんじゃないかってことだ。
けれど、アルクはまるで気にした様子も無く、相変わらず淡々と「勇者というのは、この位のことが出来る様に教育をされる」と答えた。
はっきり言って異様に見える。俺自身、異様な奴と過去かなり言われてきたが彼もどっこいなのではと思う。
教育というものは遅効性の劇薬だ。勇者としての教育の成果が今の死んだ目をしたアルクであるというのなら、正直笑えない。
ユナは昨日までの様に勇者にベタベタと触れることは無いものの、多分今まで一番優し気な顔で言った。
「アルク様はいいんです。だって勇者様なんですから」
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