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その瞬間、アルクの表情が完全な無表情になる。空気の読めない自分でも分かる変化だった。
それなのにも関わらずユナは気が付かない様で俺に話をふる。
「今の転移魔法もそうだけど、私を召喚した時のアレもアンタが一人でやったって本当なの!?」
魔力だけで描いた魔法陣は術の発動が完了すれば即座に消えるが、顔料を使って描いたものは残骸が残る。
俺が魔力切れで倒れた後、ユナは俺が描いたものを見たのだろう。
気持ち悪いものを見たという顔で俺を見るユナの顔が昔みた母親の顔とだぶる。
自分が異質だという事はよく理解している。集中しすぎて創り出す魔術はマニアックすぎるということも知っている。
多分今回のあれもそれもそういうことなのだろう。
俺に言わせてもらえば何故目の前にこんなに熱中できるものがあるのにそれに手を付けないのかが分からない。
魔術の素質が無いのなら分かる。魔術が嫌いならばそれも仕方がない。
けれど、魔術を行使するための素養があって、魔術が好きだからこそ学んで、そして職業にしている人間でも、俺の魔法研究を見るにつけ嫌な顔をする。
ユナも多分一緒だろう。魔術論を語っても多分意味は無い。
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