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「あー、ほら、俺人と協力してとかって苦手だから」
一番の理由はそれだった。他人と何かを協力して作り上げるとか、呼吸を合わせてとか無理だし、そもそも、他人と同じ部屋にいなくてはならない上に休憩と称して、魔術と全く関係の無い話をしなければならない事も苦痛だった。
だから、ずっと一人で研究している。
「ちょっと待って、人とコミュニケーション取りたくないからって理由だけで、あの超絶技巧を生み出したっていうの?」
「ああ、まあ……」
体ごとこちらに来られて目のやり場に困る。
美しく構成された魔法陣から現われた美しい精霊であるユナは、少なくとも見た目においては俺の理想そのもので、普通に話かけられたりこちらに歩み寄られたりするとどうしたらいいのか分からない。
「それでも、魔王討伐には遠く及ばないと思うけどね」
「そうだろうな」
考えるまでも無くその通りだし、だからこそ城から後をつけていた人間たちの目が届かないところに行きたかったし、きちんと話をする必要があった。
それで、付き合いきれないとユナが契約解除を求めて来たら応じるつもりだ。
「恐らく、なんて言葉をつけなくていい位、俺らは国にとって単なる捨て駒だ」
「だろうな」
俺が見解を述べると、勇者が同調する。謁見の最中床ばかり見ていたからある程度予測はしていたが、やはり俺と同じ見解だったのだ。これは助かる。なまじ正義のためとか人のために魔王を俺がというタイプだったりはしないらしい。
「話が早くてありがたい。どうせ、後数年で世界は戦争になる。だからそれまで国の機嫌を損ねない程度に、討伐活動をするべきだというのが俺の意見だが異論はあるか?」
「いや、俺もそれでいいと思う」
「そうか」
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