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この子が本当に足手まといだったとして、彼女が強くなってもやることは魔王の暗殺それだけだ。
正々堂々正面から行くか、潜んでいくか違いはあるが、結局俺達に求められていることはそれだけだ。
しかも、駄目でも仕方がない程度の存在だ。
彼女を助けることも、助けないこともどちらも碌な結果にはならないだろう。
「魔法、教えてもらえませんか」
しゃくりあげながら少女は言う。
すぐには答えられなかった。
結界が崩れる。中から二人がこちらへ戻ってくる。
金髪ちゃんは少女に視線を一瞬移すとすぐにそらす。その様子を横で魔術師が心配そうに見ていた。
「二人が恋人同士だから、私が邪魔なんですか?」
最初言われた意味が分からなかった。そもそもこんな時にする話じゃない気がした。故郷に伴侶を残したまま討伐に出掛ける人間も少なくは無い。恋人がいるかどうか、その相手が誰かなんてこと気にし始めたらどうしようも無くなる。
なのにこのタイミングでその話を出すのは悪手すぎる。そんな事俺にだってわかる。
事実、金髪ちゃんは、手を握り締めて小刻みに震えていた。
「私達の関係が何であれ、貴方にそれが原因で何かを押し付けたことや、巻きこんだことありましたか?」
魔術師が言う。その声は酷く平坦で激怒していることがありありと分かる。
「だって、じゃあ、なんでよっ!!」
もはや叫びに近い声が上がる。再び涙がこぼれ落ちる瞳は真っ赤になっており、いっそ哀れだ。
「貴方が弱いからよ。このまま、一緒に旅を続けても魔王どころかすぐ死んでしまうのがオチだわ」
魔術師が澱み無く言う。
「だって、私学校では一番の使い手だったよ。元ギルドマスターの先生だって才能あるって!!本当だよ!」
私帰る場所なんて無いの、涙声で力なく呟く少女を見て、心の底から勇者パーティによる魔王討伐のアホらしさを感じずにはいられない。
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