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「魔王を倒すという目的さえあれば、別パーティで旅をする事は問題ないのか?」
俯いていた少女は勢いよく顔を上げた。エメラルドグリーンの瞳は山岳地方に住む人間なのに、まるで海を思わせる。
「問題は、ない、と思います」
そうか、ならよかった。
「貴方、名前は?」
唸るように魔術師が言う。
「俺か?まず勇者に聞くもんじゃないのか?」
「勇者に名等不要でしょう。重要なのは勇者であるか否かだけなんですから」
当たり前のことという風に言われていささか面食らう。そんな常識が界隈にあることは知らなかった。
一言でいえば気持ちが悪いのだが、魔術師も魔術師となった瞬間に世界からもらう名前を名乗ることは無い。ここで抗議してもこの業界ではこうなのだと言われてしまえばいい返しようがない。
「ギイだ」
相手の溜め息が聞こえた。
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