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「呼び名で言われても意味がないでしょうに。といっても真名は止めてくださいよ。聞かされても困ります。」
魔術学園で使っていたものなり、なんなりあるでしょうと吐き捨てる様に言われた。
「ヴィトゥス・バランドだ。といってもこの名前は論文の発表にしか使っていないから知っていても意味ないだろうが」
魔術師が息を飲む音を聞いた。
「バランドですって!あの圧縮魔法の?」
「多分それであってる」
学園を卒業するときに書いた論文の内容がそれで、ヴィトゥス・バランドなんていう大層な名前もその時につけてペンネームみたいなものなのであっている。
魔術に使う文字を簡略化して圧縮しやすい物にして圧縮効率を高めるという理論だ。
一部で評価をされたらしいというのは学園の講師からも聞いたが、神聖なる魔術文字を汚したという話で協会からの扱いはすこぶる悪い筈だ。
描きやすい事、それから、圧縮に時間がかかるものの今普及している方式に比べて圧縮効率はおおよそ10倍程あるため、生まれつき魔力量が少ない人間の間では先に準備をしておける魔法ということで少しは普及しているらしい。
「なんで……何で貴方ほどの魔術師がこんな少数で、こんな……」
魔術研究の為の施設位、与えられていたでしょうに、と驚かれる。
「そんな訳無いだろ。こっちはまともな就職先すらなかったんだから」
恥ずかしさを隠すための変な笑いが出る。
「……とにかく、こっちはまず戦力を整えてからと考えてるから、彼女さえ良ければ、一緒に旅をしないか?」
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