温泉

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 二羽はそのまま俺の頭上を旋回してから上げたままの右手の二の腕にとまった。 「こいつらにそれぞれ書簡を運んでもらおう」  この手の鳥の妖精は地域によっては神獣扱いをされている場合もあり、酷い扱いを受ける可能性は低い。 「そんな、ポンポンと契約妖精を出せる出せるなんて!」  興奮気味に魔術師に言われ、こちらが驚く。 「ある程度利便性の高い契約は常にスタンバイモードにしてるから、後は発動させればいいだけなんだよ」  説明するが、それでもまだ魔術師の視線は二羽の鳩にくぎ付けだ。  もっと詳しく説明をとも思ったが経験上大体、酷く引かれて、気持ち悪いという感情を隠さない視線を浴びせられるだけだ。 「いいだろ?全24色いると言われてるが、何とか22色までコンプリートしてるんだ」  魔術師に目を細められて、この返答も失敗だったことにようやく気が付く。 今更面白い話をするのも無理だし、軌道修正するような能力も無い。 「まあ、とにかく、鳩に見えるが召喚妖精だ。すぐに目的地まで書簡を届けて戻ってくる筈だ」  星の早さと呼ばれるスピードでこの鳥は空を駆ける。瞬く間に目的地についてくれることだろう。  座標は、魔術師の為の公共の転移魔法の中継地点から割り出せばいい。大概の妖精は魔力を見ることが出来るのだ。  程なくして、2通の書簡が書きあがる。それを見かけ上小さくなる様、圧縮する。これは、宛先の人物を感知すると元に戻る仕組みだ。  俺は宛先の人物を知らない為、魔術師の女性が施す。  それを、妖精の背中に括り付け、金髪の勇者に指定された通りの座標に飛ぶように指示を入れた。  二羽は空高く舞い上がり、瞬く間に視界から消えた。
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