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「は?いや、そういうんじゃないな。まあ、可愛いとは思うけど」
「あー、違うのか。てっきりユナにあまり興味が無いみたいだから、ああいう感じの女性が好みじゃないのかと思ってた」
ああいうという科白に合わせてアルクはユナのボディラインをなぞるように手を動かす。そういうところなんかおっさんみたいだなと思って笑った。
「いや、そりゃあ好きだよ。おっぱい」
「じゃあ、なんで」
「だって、あんな美しい人が俺のこと好きになる訳がないだろ?
手に入らないって分かってるのは案外気楽だぞ。
まあ、そういう意味だとナタリアも鑑賞する以外何かある筈がないから一緒だな」
俺が言うとアルクは変な顔をしていた。
ただ、それがどういう感情によるものなのか、そういったものに疎い自分ではよく分からない。
「モテようとかって思わねーの?」
「いや、俺に限ってないだろ。実際全くない訳だし」
「能力は高いんだろ。今日聞いた話だと」
「俺は伝統と魔術の歴史を踏みにじったらしいから」
学校を卒業した時に言われたセリフを思い出す。
好き好んでリスクを冒して、俺と居たい人間なんていないだろう。
アルクは「ふーん」と答えただけであとはお互い黙ったままだった。
まあ当たり前だ。俺とアルクは別に友達じゃない。
慰めあったりするような間柄では無いのだ。アルクにすがられたとしても俺だって無理だ。
だから、お互いに絶対に触れて欲しくない部分には触れないで過ごすしかない。それは、今後旅をするナタリアだってそうだ。
国に命令されて集まっているだけのメンバーなのだ。それ以上踏み込んでも多分、誰も幸せにはならない。
無言のまま風呂から上がり、着替え、ユナたちのところへ戻ると何故か、女子同士4人はとても仲良くなったらしく、和気あいあいと話をしていた。
先程までまるで葬式みたいな雰囲気だったのが嘘みたいだ。女って分からない。
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