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「大丈夫か?」
横に座っても俺の存在に気が付かない位ナタリアは憔悴しきって見えた。
背中を数度撫でる。
そこで、ようやく、こんな気持ち悪いタイプの男に体を触られても嫌なだけだよなと思い至った。
手を離して、それでごめんとあやまる。
ナタリアは泣きはらした目でこちらを見た。
「何で、謝るんですか?私を連れてくのが悪いことだと思ってるんですか!?」
悲痛な叫びだった。
「それは、違う。君をパーティに入れたことは後悔していない。
俺が謝ったのは、俺なんかに触られても嫌なだけだと思ったからだ」
今日は謝ってばかりだ。人付き合いが苦手なので、人と過ごして失敗しない方がおかしい。
ナタリアはこちらを見上げて、それからキョトンと答えた。
「別にいやじゃなかったです」
「そうか」
どうすればベストなのか分からず、手をニ、三度握ったり開いたりした後、ナタリアの背中を彷徨ったが、意を決してもう一度彼女の背中を撫でた。
すると、先程の声を殺した鳴き声では無く、わーわーと声を上げてナタリアは泣き出した。
オロオロとする俺の胸倉に顔を寄せて、泣き叫ぶ。何もしてあげられそうなことはなく、ただただ、彼女の背中を極力優しくなでることしかできなかった。
ローブはナタリアの涙と鼻水とでぐちゃぐちゃになっている気配はしたが、どうでもいいやという気分だった。
ただ、今は泣きたいだけ泣いて、それで少しでも明日から彼女が彼女の思う様に生きられるようになればそれで充分だった。
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