魔術師ギイ

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* * * 「本当ですか!!」  事実上の生贄の様な状況で、魔術師の中から選ばれた俺に対して負い目があるのであろう、宮廷魔術師数人が城にある召喚用の設備を貸してくれると申し出てくれた。  極力、できれば全く働きたくない俺にとって、この提案はありがたかった。 魔力の流れを完全に制御できる空間は民間のものを借りるにも結構な金額を取られるし、魔法陣を書く為の専用の魔石を砕いた顔料も使って良いそうだ。  戦闘時などは即効性があるのでそのまま自分の体内魔力で魔法陣を形成するのだが、契約を結ぶための召喚魔術は数秒で呼ばないとならないということは無いため、より良い出会いのためにできるだけのことはするべきだ。  とはいえ、魔石はそのままでも護身用などの需要がある為高価なものだ。  自分で魔力を石に込めれば作れるのだが、そもそもここにあるのは石自体にそれなりの価値がある宝石を使っている筈だ。  顔料を使って描くということにあまりいい思い出は無いのだが、こんな機会は今をおいてもうないだろう。  ありがたく話を受ける。  馬鹿げた話だが、準備期間を設けるつもりもないらしく明日出発させられるらしいので今日中に、もっと言うと夜は晩さん会に招待されるらしいのでそれまでにということらしい。  まず、それとは別に魔術師用のローブを作るのでその採寸をと言われたが断る。  今着ている黒い物で充分だった。  戦う時も、魔法薬の調合をするときも、研究をするときも大体において汚している気がするので、それを覆い隠す黒が一番なんだよ。黒が。  ぐちゃぐちゃに汚れて、周りに嫌な顔をされて、最初はそれに気が付かずに暫くしてようやく気が付いて、それでこっちが嫌な気持ちになる位なら機能はおとっても今のままで良かった。  魔法陣を描く為の場に案内をされながら、確認のために宮廷魔術師を何人か配置するという話も断った。  人と関わることが苦手なのだ。出来ることならば一人だけでやりたかった。  人の目があるだけで集中力3割減だ。
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