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目が覚めて飛び起きると、魔力欠乏症状でぐらりと視界が揺れる。
眉根を寄せて、頭を押さえる。あたりを見回すとそこは魔法陣を描いた塔では無く狭い小部屋のベッドの上だった。
まあ、概ね目の前にいる勇者とそれに絡まる様に抱き着いている精霊ちゃんを見て状況を察した。
ぶっ倒れた俺を心配して、なんていう夢は見ない。概ね宮廷魔術師がいつまでたっても塔から出てこない俺を心配して中を確認すると俺が倒れていて慌ててここまで運び勇者に伝えた。勇者は俺の状況の確認に来て精霊ちゃんに気に入られた。きっとそんなことだろう。
勇者のカリスマ性ってやつは精霊ちゃんまで虜にするらしい。別に羨ましくはない。ないったらない。
勇者と精霊ちゃんを見ながらため息をつく。
まあ、こんなものなんだろう。
精霊は、高位の妖精の一種である。人間に好意的な精霊が呼び出せたのだ。召喚魔法の研究は成功した。それをまず喜べばいいのは分かってるのに、分かっているに悔しい。
「ああ、起きたのか」
相変わらず死んだ様な目をしている勇者に声をかけられ「迷惑をかけて、悪かった」と伝える。
「魔術師達、お前の書いた物見て絶句していたぞ。あれは一体なんなんだ?」
勇者は魔術の心得がほとんど無いらしい。しかも、とても馴れ馴れしい。
勇者という生き物は皆こうなのだろうか。
「召喚魔法ってやつだ」
その召喚魔法で呼び出された当人は勇者ばかり見ているから恐らく契約破棄して異界に帰ることは無さそうだった。
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