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鯛の刺身が綺麗に盛られている。
その傍らには生卵。
ほかほかの白米は適度に添えられている。
大量の唐揚げは盆のよそ、大皿に坐していた。
その周りはじゃこ天に囲まれている。
さて、鯛めしである。
愛媛県は西の街、宇和島の名物。
リアス式海岸に恵まれたこの街は養殖業が盛んで、真珠なんかは生産量一位だ。
海産物も豊富で、独自の名物に事欠かない。
東・中・南予と別れる愛媛県の地域のうち、他の地域からのアクセスが悪いのが難点か。
子供達は感動の眼差しで刺身に釘付けになっている。
刺身の鯛めしというのは全国的にも珍しいのではないだろうか?
俺の軽い音頭で食事が始まると、彼等は一斉にそれにかぶりついた。
とたん、とろけるような表情を浮かべる。
それを見守る保護者達も余りの上手さに驚愕しているようだった。
きりっとしまった身に、卵のとろとろした甘さ。
それがご飯に絡まれば、絶妙な食感に、否が応でも箸が進むというものだ。
他の参加者も軒並み満足そうに頬をゆるめている。
俺はそんな彼等を見て少し安心しつつ。
それでもやっぱりため息をついた。
「どうしたんですか?」
対面に座る猪本がにっこり微笑んで聞いてくる。
箸を器用に使って、鯛のカマ(ほっぺた)のから揚げを食していた。
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