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だが、それは、これまでのところが、普通の観光旅行と変わらないものだったからだ。
「……どういうことです?」
俺の発言に、猪本は眉をひそめる。
そういう動作でさえ絵になるのだからこの子はすごい。
俺は見惚れながらも
「つまりさ」
と鯛めしを頬張って続ける。
「今までのところは、これって、愛媛の普通の観光ツアーと変わりないでしょ。問題は、これが『ミステリーツアー』っていうことなの。オリジナルの、シナリオのある、参加型謎解きゲームっていう点」
「……ああ」
なるほど。
猪本は納得したようにしみじみと頷いた。
「未知数ですからねー」
「そう。」
俺も刺身を飲み込みながら肯定する。
「未知数なんだよ。どうなったもんか、全然分からない。何が失敗に転ぶか……」
シナリオの心配も勿論ある。だがその方は、『ミステリーの夜』を幾度も企画しているプロの会社に頼んでいるから、そこまでの不安はない。
問題なのは、演出。
屋外型なので天候の問題もあるだろう。幸い今の所晴れだが。
そして、客の動き。
これが一番の不安のタネだった。
例えどんなに素晴らしい謎解きを用意したところで、この子供達はそこに込められた愛媛の要素やその他諸々を無視して台無しにしてしまうのではないか?
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